無添加書道 / 書道家 遠藤夕幻 ~ mutenkashodo ~

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【連載】雄勝硯物語 - 8/希望を石に託して

2011年の8月。
雄勝町を震災から半年と経たない頃に訪れた際は、みんな生きることに必死で、なんとか繋がった生命を大事にすることが精一杯、といった印象を受けた。


津波は、きっと多くの‘なにか’を掻っ攫い、奪っていった。

それは、家族であったり、友達や同僚。
はたまた、財産や家、仕事であったりするだろう。

そして、生きる糧や生き甲斐でさえ、いともたやすく奪っていったのだ。


私の尊敬する硯職人・遠藤市雄さんは、‘硯’を奪われていた。
2011年までの話は、【連載】一面の硯が繋ぐ、雄勝硯物語 - 4 にて紹介している。
本日、語らせていただくのは、その後の話。震災から1年半が経った頃である。


2012年 穏やかな雄勝湾

とても穏やかな海。ここ雄勝湾は、エメラルドグリーンに見える綺麗な色をした海だ。
この写真だけを見ると、まさかこの海が牙を剥き出しにして襲いかかってくるとは到底思えない。だが、それは現実に起こってしまった。


2012年 雄勝町 水浜周辺の風景

津波は、今まで人々が築き上げてきた‘信頼’であったり、‘繋がり’でさえ根こそぎ海の中に引きずり込んでいってしまった。かつては、一つの集落があった場所が、今ではただの更地である。これでは、ドコがドコだか分かりもしない。

親しい隣近所の人たちは、バラバラになってしまい、必ずしも同じ集落の人たちが同じ仮設住宅に入れるとも限らない。生活の環境や人と人との関係性も、ガラッと変わってしまった。

・・・自然災害だから。どうしようもないのかもしれない。
だが、どうしようもないからと言って、簡単に諦め切れるものではない。

人は皆、そんなに単純ではないし、強くもない。
たとえ理屈は分かっていても、心がその理屈通りに動くかどうかは、別である。


2012年 雄勝町 遠藤市雄さんの仮の硯工房2

ただ、私は幸運なことに、‘強き人’を知っている。
自ずから「わたしは強いよ」とは言わずとも、強く在ろうとして、それが自然と他者に伝わり、決して諦めない芯の強い人。腕は確かで、豪快さと繊細さを併せもつ硯職人を知っているのだ。


2012年 雄勝町 遠藤市雄さんの仮の硯工房1

仮の工房には、各地からかき集めた数種類の鑿と、工具が並んでいた。
去年の時点では、工房もなく、硯を彫るための道具は何一つ無かったはずなのに、たった一年で道具は揃い、そこには新しく彫られた硯が立ち並んでいたのだ。


2012年 雄勝町 遠藤市雄さんと撮影

市雄さんは、いつもの笑顔で、私を迎えてくれた。

「遠いところ、よく来てくれた」

・・・元気そうで何よりだった。
そこには、‘硯職人’の市雄さんがいたのだ。

2012年のこの時点では、伊勢神宮へ「700枚」の硯を奉納する仕事が来てると話してくれた。おそらく式年遷宮に関係することだろう。

もう「道具がないから彫れない」なんて悲しいことを言わなくて済むようになったのだ。

やっぱり、仕事をしている、硯を彫っている市雄さんはカッコよかった。硯を彫ることなら任せろ、という自信に満ち溢れた職人気質の人を、私は心から尊敬する。質問したことに対しては、詳しく教えてくれるが、市雄さんは、自分からはあまり多くを語らない。そういう仕事に関して、口数が少ないところも職人気質である。本当に格好良い。

私も市雄さんのようになりたいと、そう思う。
こんなにも強く、自分の仕事に自信があり、優しい笑顔ができる人に。


市雄さんをはじめとした、硯に関わる人たちは、今一度、石に希望を託している。
600年前より、雄勝の石は、硯に適しているとされ、石と共に歩んできたのだ。

600年前とは時代は違えど、やはり雄勝は硯の里、石と共に在るのだ。
復興の兆しは石にあり、市雄さんや雄勝の硯職人さんたちは、日々希望を彫っている。

希望を石に託して。




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